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             【P】シンジとアスカ
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 その日、ネルフはゼーレの手により攻撃されていた。
 そしてすべてが終わった。

 アスカは弐号機に宿る母親の存在に気付き復活することができた。シンジも初号
機に乗り戦っていた。初号機の覚醒により量産機をからくも倒すことができたが、
そのダミープラグにカヲルのクローンが使われていることを知ったシンジは以前に
も増して生きる気力を失っていった。

 しかしアスカは違った。

 アスカは日本に来てからのことを思い出していた。

 シンジを乗せて初めて戦ったこと。
実力を見せつけるためにと言ったけど、ホントは怖かったのかも知れない。

 シンジとユニゾンしたこと。
ユニゾンの特訓、今思い出すととても楽しかった。

 マグマの中でシンジに助けられたこと。
あの時シンジがたくましく思えた。

 シンジとキスをしたこと。
なぜシンジとキスをしたくなったのだろう。

 夫婦げんかとからかわれて赤くなったこと。
でも、悪い気はしなかった。

 ドイツに居た14年間、楽しいと思ったことなんて無かった。

 でも、日本に来てシンジと出会ってからは違った。

 確かに口喧嘩をすることもあったが、シンジと一緒にいるときが一番楽しいのだ。

 そんなことを思うとなぜか心が暖かくなる。
アスカは今までシンジに寄せていた気持ちがわかった。
そう、シンジが好きだということに。


 しかし、シンジはそれどころではなかった。

 自分を好きだといってくれたカヲル君を自らの手で殺してしまった。
 二度目はいくらダミープラグとはいえ二度も殺してしまったこと。

 アスカを追い込めたのは自分ではないか。
 意識不明のアスカに対して行った行為に対する嫌悪感。

 自分は他人を傷つけることしかできない人間ではないのか。

 そんな考えが永遠とループしていた。


 アスカは落ち込んでいるシンジを見たく無かった。

 「ごめん」といいながらも微笑んでいるシンジを見ていたかった。
 シンジとなんてことのない会話がしてみたかった。
 シンジのご飯が食べたかった。
 そして、いつもシンジにいてほしい。


 そう思ったアスカはシンジをとにかく救いたいと、立ち上がらせたいと思った。
そしてアスカはシンジの部屋へ入っていった。

「シンジ・・・」
「・・・」
「ねぇ、シンジ、あたしの話、聞いてくれる?」
「・・・」
「あたし、シンジのこと、好き・・・かもしれない」
「・・・」
「ねぇ、聞いてるの!あたしが好きだって言っているのよ!」
「・・・」
「どうしたのよシンジ・・・あたしを助けてくれたシンジは、お弁当作ってくれた
 シンジはどこ行ったのよ・・・」
「僕はアスカが思っているほど優しい人間じゃないよ。
 アスカにひどいことをしたんだ。
 カヲル君も殺してしまったんだ。
 優しさなんてかけらもない、ズルくて憶病なだけだ」
「そんなこと無いと思う・・・
 だってシンジは優しいもの・・・
 シンジが居なければあたし・・・」
「僕は自分が大嫌いなんだ!
 僕は何もしたくないし・・・
 したいことも見つからないし・・・
 誰も好きになりたくない!!
 何も食べたくないし・・・
 誰とも会いたくないっ!!
 僕は消えてなくなってしまいたいんだ!!」

 そして沈黙・・・

「ねぇ、シンジ。キスしようか」
「や、やめてよ!」
「女の子とキスするのが怖いの?」
「やめ・・・」
「無理矢理しちゃう・・・」

 シンジを押し倒しアスカはキスをした。
しばらくしてアスカとシンジの唇ははなれた。アスカの目にはうっすらと涙が浮か
んでいる。

「アスカ・・・泣いているの?やっぱり僕は傷つけることしかできないんだ・・・」
「そんなことばかり言うから傷つくのよ!お互い!どうして自分が嫌いなの!」
「僕は捨てられた要らない子だもの・・・」
「あたしも昔はそうだった。だからエヴァに乗って自分の存在を示そうとした。
 でも、あたしはみんな嫌いだった。自分も嫌いだった。
 でもね、シンジが、シンジがあたしを変えてくれたのよ!
 みんな好きになれた。自分を好きになれた。そしてシンジのこと好きになったん
 だから!」
「アスカ・・・」
「だから・・・自分を・・・傷つけるのは、やめて・・・」

 アスカは涙声で訴えていた。

「シンジぃ・・・」
「・・・アスカ」

 いつしかアスカはシンジの胸の中で泣いていた。そしてシンジはアスカを抱きし
めていた。

「ごめん・・・アスカ・・・」
「・・・」
「僕は、変われるのかな・・・」
「変わりなさいよ!」
「うん・・・ありがとう、アスカ・・・」


後書きと称したたわごと

ア○タヌーン97年12月号のデスコミを見て思いついた話です。
この号は表紙のセフィロトの樹に始まり、デスコミ、カーム○レイカーとかエヴァを思わせるものが結構あり、デスコミに出てきたセリフをみて思いついた。
デスコミだけでは足りないので劇場版混ぜて作っていたらなぜか拾伍話まで混ざってきた。不思議だ・・・

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