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             【SS】ATフィールド
               第2話「アスカ」
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 二人が別れて数日たった。

 アスカは今は主なき家に住むことにした。比較的にもサードインパクトの影響が
少なく、食料は近くにあったコンビニ跡から調達していた。
しかし、それ以外は特に何もすることもなく、また、何かしたいわけでもないので
家でごろごろしているしかなかった。そして夜が近づいてくるにつれて色々な事が
思い出された。

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 あれは日本に来る途中のことだったわね。
あのとき加持さん、全然相手にしてくれなかったっけ。
加持さん、一緒にいてもどこか別の場所を見ていたし、あまり構ってくれなかった。
次の日シンジ達に会ったのよね。シンジに会ってみて冴えない奴だと思った。
そのあと、使徒が現れて弐号機にシンジを乗せて戦ったのよね。

 日本に着いて初めての戦い。あれがあたしのデビュー戦よね。
そして、ユニゾンの特訓。あのときはしかたなくと思ってた。けど、今思えば結構
楽しかったかもしれない・・・
二人きりの夜。シンジに「ジェリコの壁」って言ったけど、ホントは寂しかった。
そういえば朝起きてみたらシンジが寝ていた布団に寝ていたんだっけ。
どうしてシンジなんかのところに・・・
そして、夜のこと聞こうとしたらケンカになってしまったのよね・・・

 修学旅行、楽しみだったのにな・・・
ドイツにいた頃なんかまわりに同じ年の子なんかいなかったから、楽しみだったの
に・・・
プールでシンジに迫ってみたけど、駄目ね、気の利いた答えなんか返ってこないし。
まさかマグマに潜るなんて思ってもみなかったな。使徒には勝ったけど、パイプが
切れてもう終わりだと思った。でも、あのときシンジが助けてくれた。とても嬉し
かったな・・・。こんなあたしでも助けてくれる人がいるんだもん・・・
でも・・・・・・

 ヒカリの頼みでデートしたけど、とてもつまらなかった。あたしの外見ばかり見
てマニュアルどうりのデートコース。まともな男は加持さんだけね・・・。
でも、その加持さんはミサトと一緒だった。加持さんはミサトを、ミサトは加持さ
んを見ていた。あたしのことは見ていなかった。
シンジは、シンジはどうだったの?。だから、シンジとキスした。でもシンジも
あたしのこと見ていなかった。何も感じなかった・・・
抱きしめてもくれなかった・・・・・・

 チルドレンはあたしの誇りだったのに、なんであんな奴が選ばれたのよ!
あたしが今まで受けた訓練はなんっだったのよっ!
でも、あいつは使徒に乗っ取られた。正直ほっとした。当然よ、そんな簡単に
チルドレンにはなれないんだから。でも、あたしはそんな奴にも負けてしまった。
何もできないうちに負けてしまった・・・

 これ以上負けることはできなかった。シンジはいなくなった。これ以上負けたら
あたしの居場所がなくなってしまう。でも・・・何もできなかった。
シンジが戻ってきた。使徒はシンジが倒した。あたしは何もできなかった・・・

 そのときシンジが初号機に取り込まれた。皆シンジのことばかり気にして誰も
あたしのこと見てくれなかった。シンジは戻ってきた。だけど、シンジは
ファーストのことばかり気にしている。シンジもあたしのこと見てくれない。
使徒に心を汚されてもシンジは助けてくれなかった。誰も助けてくれなかった。
嫌いなファーストに助けられたんだ。いや、ファーストはただ使徒を倒しただけ。
あたしを助けたわけじゃないんだ・・・

 あたしのときには出さなかったのに、何でファーストの時には出るのよっ!
あたしのこと助けてくれなかったのに、何でファーストのこと助けるのよっ!
あたしのこと誰もいらないんだ・・・

 エヴァの中にママが居た!。いつもあたしのそばにいてくれたんだ!
ママが守ってくれる、ママが一緒にいてくれる。だから負けるはずないと思ってた。
でも、目を潰され、腕を裂かれ、槍に貫かれてエヴァシリーズに喰われてしまった。

気付くと変な空間にいた。そこにシンジがいた。
シンジは自分の事しか見ていなかった・・・
シンジは誰のことも見ていなかった・・・
そしてシンジは私の首を絞めてきた・・・
現実に戻ってもシンジは私の首を絞めていた・・・
気持ち悪かった・・・・・・

シンジが嫌だった・・・
あたしを傷つけるだけだから・・・
いつもあたしの中にいて傷つけてばかり・・・

いや・・・
どうして嫌なことばかり思い出すのよっ!
もう、終わったことなのにっ!
もう、誰もいないのにっ!
こんなこと考えたってどうしようもないのにっ!
助けてよっ、加持さん!・・・加持さん!
あたしのこと助けてよっ!あたしのこと見てよっ!
なんで誰も助けてくれないのよっ!
一人は嫌なのに・・・
大人になれば一人でも辛くないと思ったのに・・・

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 アスカは今までのことを思い出しながら泣きわめいていた。ここ数日いつものこ
とであった。そして夢の中でも使徒に心を汚されたこと、量産機に喰われたことを
思い出していた。

 だが、この日の夢は少し違っていた。
それは日本に来たばかりの頃であった。弐号機にシンジを乗せて戦ったこと。
ユニゾンの訓練、マグマの中でシンジに助けられたこと。夫婦げんかなどとからか
われたこと・・・
確かに辛いこともあった。しかし、そればかりでなく楽しかったこともあったはず。
夢の中でアスカは思い出していた。そして楽しい思い出には何故かシンジもそこに
いるのであった。

 翌朝、アスカは久々によく眠ることができた。そして夢の事を思い出す。

「なんであんな奴の事ばかり思い出すのよっ!」

 アスカは少しいらだっていた。しかし『あんな奴』のおかげでよく眠ることがで
きたのも事実である。
そしてシンジはただ傷つけるだけの存在ではなかったということを・・・

「あんな奴でもいないよりましか・・・」

 アスカは二人が別れた場所へ戻ることにした。


第3話「シンジ」へ続く

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